レーザー白内障手術は2008年にヨーロッパで最初の手術が行われ、既に世界50カ国以上の最先端の医療機関で導入されています。
白内障手術は超音波乳化吸引装置の発達によって、ここ20年程の間に術式が洗練され、手術件数も飛躍的に増加しました。近年ではこのフェムトセカンドレーザーを使用したレーザー白内障手術が、白内障手術の新たな技術革新として近未来のスタンダードな手術になると言われており、当院では東京多摩地区(23区外)ではじめて、このレーザーを導入しました。
ここでは、多焦点眼内レンズを使用したレーザー白内障手術について解説します。
白内障手術は従来ほぼ手作業(マニュアル)で手術を行っていました。手作業での術式自体はほぼ完成され比較的良好な結果を得ることが大部分ですが、手作業ゆえにどうしても手術の過程でトラブルが起こりやすい箇所が存在します。
LenSxレーザー装置は、手作業で行う場合のトラブルが起こりやすい部位を含め手術の工程をオートメーション化(自動化)することで、術中合併症を可能な限り減少させることが可能となり、またマニュアルの手術では実現できないような非常に高精度の手術が可能となりました。
手作業による水晶体の前嚢切開では、形状を完全な真円にすることができません。特に多焦点眼内レンズではレンズのセンタリング(中心位置決め)が非常に重要で、眼内レンズの中心位置がずれてしまうと視力が出づらい場合がありました。
当院のレーザー白内障手術では、コンピューター制御されたレーザーで前嚢切開をするので、形状が正円になり眼内レンズの中心位置も安定し、良好な視力を得ることが可能です。
また前嚢切開の位置も瞳孔中心、水晶体中心など患者様の目に合わせて自由にカスタムすることが可能です。
手作業 | LenSxレーザー |
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[前嚢切開] |
[前嚢切開] |
[核分割] |
[核分割] |
マニュアル手術では術者が手作業で水晶体を分割した後、超音波で乳化させながら吸引する必要があるため、症例や術者の技量によって分割の精度や術後の炎症に差が大きくなります。
LenSxレーザーでは、あらかじめレーザーで水晶体を細かく分割しておくことで、その後ほとんど超音波に頼ることなく水晶体を吸引できるため安全性が格段に向上しました。また超音波による周りの組織へのダメージが少なくなり、角膜内皮障害などの合併症を抑え、術後早期からの視力回復が可能となっております。
手作業のマニュアル手術では、傷口の作成にメスの使用が必須です。LenSxレーザーでは水晶体を取り除くための傷口をレーザーで作成可能しますので、メスを使わずに手術を行うことができます。
特に多焦点眼内レンズの場合は、術後に乱視が残るかどうかが、見え方に大きく影響します。そのため、通常のマニュアル手術では、乱視がある場合は多焦点眼内レンズの手術ができないこともありますが、LenSxレーザーでは角膜に減張切開を入れることで、乱視も低減することができるため、より多くの人が手術を受けることができ、またより質の高い術後の見え方が期待できます。
多焦点眼内レンズは、焦点を一つの距離のみに合わせる単焦点眼内レンズと異なり、遠距離・中間距離・近距離など複数のポイントに焦点を合わせることが可能なレンズです。 右の写真のように近くのメモや、遠くの値札にも焦点が合うようになります。 もちろん、若い頃の見たいところに自由にピントを合わせてくれた水晶体とは異なるので、全くメガネが必要なくなるわけではありませんが、従来の単焦点眼内レンズと比べてメガネをかける頻度は圧倒的に少なくなり、患者様のQOL(生活の質)を向上させることが可能です。
職業柄、メガネやコンタクトレンズの装用ができない方はもちろん、メガネをかける頻度や本数を減らしたい方には好ましいと言われています。欧米では、老眼矯正の選択肢として多焦点眼内レンズを入れる人もいます。